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歯茎が下がったら治療で戻せる?歯肉退縮の治療法を歯科医が徹底解説【根面被覆・結合組織移植】

投稿日:2026年6月9日

カテゴリ:歯周病 歯肉退縮

執筆担当:西宮北口歯医者スター歯科 院長 生野智也

「最近、前より歯が長く見える気がする」「歯と歯のあいだに黒い三角の隙間ができてきた」「歯茎が下がってしまったけれど、どうにかならないだろうか」。こうしたお悩みで来院される方が、年々増えています。

歯茎が下がると、多くの方は「年齢のせいだから仕方ない」「もう元には戻らない」と感じてしまうようです。たしかに、一度下がった歯茎が自然に元へ戻ることはありません。ですが、原因を正しく見極めて適切な治療を行えば、見た目を回復させ、歯の寿命を守れる可能性は十分にあります。あきらめるのは、まだ早いと考えています。

この記事では、歯茎が下がる原因から、下がった歯茎を回復させる「根面被覆」という治療、そして多くの方が一番気にされる「どこまで戻せるのか」という点まで、できるだけ専門用語を使わずに解説します。当院での工夫や実際の症例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1. 歯肉退縮とは?まずは自分の歯茎をチェック

歯肉退縮とは、歯茎が下がって、本来は隠れているはずの歯の根元が見えてきてしまう状態のことです。「歯が伸びた」と感じる方が多いのですが、実際に伸びているのは歯ではありません。歯茎のほうが下へ下がっているだけです。

治療を考える前に、まずは自分の歯茎が今どうなっているのかを知ることが大切です。ここでは基本と、自宅でできる簡単なチェックの目安をお伝えします。見え方には個人差があり、軽いうちは気づきにくいものです。

1-1. 「歯が長くなった」と感じたら要注意

いちばん分かりやすいサインは、歯が前より長く見えることです。笑ったときに見える前歯の長さが左右でそろっていない、あるいは1本だけ長く感じる。そんなときは、その歯の歯茎が下がってきている可能性があります。

健康な歯茎は、歯と歯のすき間を三角形に埋めています。歯茎が下がるとこの三角が痩せ、黒い三角形のすき間が出てきます。これをブラックトライアングルと呼びます。「前より食べ物が挟まるようになった」という変化も、よくあるサインの一つです。

もう一つの目安が、CEJと呼ばれるラインです。歯の頭の部分と根っこの境目を指す言葉で、本来はこの境目あたりまで歯茎で覆われているのが理想です。歯茎が下がると、この境目を越えて根が出てきます。根の表面は歯の頭より黄ばんで見えるので、「根元だけ色が濃い」と感じたら、それも退縮のサインです。

1-2. しみる症状と「知覚過敏」の関係

露出した根の表面は、歯の頭のような硬い層で守られていません。そのため冷たい水や歯ブラシの刺激が神経に伝わりやすく、「歯磨きでしみる」「冷たいものがキーンとする」といった知覚過敏が起こることがあります。

ここで一つ、誤解されやすい点をお伝えしておきます。「歯茎を戻す治療をすれば、このしみる症状も消えるはず」と期待される方が多いのですが、歯茎を回復させる根面被覆を行っても、知覚過敏そのものが必ず良くなるとは限りません。しみる症状への対処と、歯茎を戻す治療は、目的が別だと考えてください。

しみ方には個人差が大きく、まったく感じない方もいれば、強く出る方もいます。症状が気になる場合は、知覚過敏用の歯みがき剤やコーティングなど、別の方法を組み合わせて対応するのが一般的です。

1-3. 放っておくと「根面う蝕」と歯の寿命に響く

「しみるだけなら様子を見よう」。そう考えて放置すると、見た目以上に困った問題につながります。代表的なのが、露出した根にできる虫歯、根面う蝕です。

根の表面は歯の頭にくらべて軟らかく、酸に弱いため、虫歯になると進行が早くなりがちです。歯の頭には一度も虫歯ができたことがない方でも、歯茎が下がってから根元ばかり次々に虫歯になる、というのは珍しくありません。

さらに、歯茎が下がるということは、その下にある骨も一緒に痩せているサインでもあります。歯茎と骨は連動しているため、退縮が進むと歯がぐらつきやすくなり、最後には歯の寿命そのものを縮めてしまいます。歯肉退縮は見た目だけの問題ではなく、将来歯を失わないために向き合っておきたい症状です。進行度には個人差がありますが、早めに原因を断つほど有利になります。

下がった歯茎は自分で戻せる?

「歯茎マッサージや念入りな歯磨きで、自分で戻せませんか」とよく聞かれます。結論から言うと、一度下がった歯茎がセルフケアだけで元の高さに戻ることは、基本的にありません。下がる過程で土台の骨も失われていることが多く、組織が自然に再生しにくいからです。

ただ、間違ったケアをやめる意味は大きいです。たとえば力任せの歯磨きが原因なら、磨き方を直すだけで「今より下がるのを止める」「炎症が引いて少し引き締まる」といった変化は望めます。自分でできることの限界については、下がった歯茎を自力で戻す方法はある?セルフケアでできることもご覧ください。

2. なぜ歯茎は下がるのか?原因の見極めがすべて

歯肉退縮の治療でいちばん大事なのは、いきなり歯茎を戻すことではありません。「なぜ下がったのか」を突き止めることです。原因を残したまま歯茎だけ回復させても、また同じことが起きてしまいます。

原因は一つとは限らず、いくつかが重なっていることがほとんどです。ここでは代表的な三つ、歯周病・磨く力や歯ぎしり・歯並びやかみ合わせに分けて見ていきます。自分はどれに当てはまりそうか、考えながら読んでみてください。重なり方には個人差があります。

2-1. 歯周病で歯茎と骨が失われる

もっとも多い原因が歯周病です。歯と歯茎のすき間にたまった汚れの細菌が歯茎に炎症を起こし、進むと歯を支える骨が溶けていきます。骨が下がれば、その上の歯茎も一緒に下がります。

やっかいなのは、痛みが出ないまま進むことです。「歯磨きで血が出る」「朝起きると口の中がネバつく」。そうしたサインを見逃しているうちに、気づけば歯茎がかなり下がっていた、というケースをよく見かけます。

歯周病が原因の場合は、まず歯周病そのものの治療、つまり汚れや歯石を取って炎症を抑え、土台を安定させるのが先決です。歯周病の基本的な治療は予防歯科・歯周病治療のページで、自覚症状なく進む怖さは「サイレントキラー」歯周病の記事でくわしく説明しています。

2-2. 強すぎる歯磨き・歯ぎしり・食いしばり

意外と多いのが、「よかれと思って一生懸命磨いていた」ケースです。硬い歯ブラシで強い力をかけて磨き続けると、歯茎が物理的に削れて、すり減るように下がっていきます。利き手側だけ、あるいは前歯の決まった場所だけ下がっているなら、磨く力が強すぎる可能性が高いです。

寝ている間の歯ぎしりや食いしばりも見逃せません。歯に強い力が繰り返しかかると、根元に負担が集中して、歯茎が下がったり、歯の付け根がくさび状に欠けたりします。

この「磨きすぎ」タイプは、本人にまったく自覚がないのが特徴です。だから治療の前後で正しい磨き方を身につけることが、再発を防ぐカギになります。力加減には個人差があるので、一度プロにチェックしてもらうと安心です。

2-3. 歯並び・かみ合わせ・矯正との関係

歯並びやかみ合わせも、歯茎の下がりと深く関わります。もともと外側に飛び出して並んでいる歯は、覆っている骨や歯茎が薄く、下がりやすい傾向があります。

ここで知っておいてほしいのが、矯正と歯茎の関係です。矯正で歯を動かす向きによって、歯茎への影響が変わります。歯を顎の骨の内側、つまり歯列の内側に入れていく動きなら退縮は起きにくいのですが、骨の外側へ出していく動きでは、その歯の歯茎が下がりやすくなります。

だからこそ、矯正の計画を立てる段階で退縮のリスクまで見越しておくことが大切です。くわしくは後の章で触れますが、矯正と歯茎の治療の両方が分かる歯科医が計画すると、こうしたリスクを抑えやすくなります。歯並びの状態には個人差があるため、事前の診断が欠かせません。

一度下がった歯茎は、もう元に戻らない?

「一度下がったら一生戻らないと聞きました」と、不安そうに尋ねられることがあります。たしかに、自然に・自力で完全に元どおりになることはありません。

ただ、話はそこで終わりではありません。原因が力任せの歯磨きなら、磨き方を変えることで炎症が落ち着き、わずかに引き締まって「少しマシになった」と感じられることはあります。もともと歯茎が薄いタイプの方は戻りにくい傾向がありますが、見た目をしっかり回復させたいなら、次の章で説明する根面被覆という外科的な治療が選択肢になります。「自然には戻らない、でも治療でなら戻せる可能性がある」。この違いを、ぜひ知っておいてください。戻り方には個人差があります。

3. 下がった歯茎は治療で戻せる?「根面被覆」とその限界

ここからが本題です。下がった歯茎を治療で戻す方法について説明します。結論を先に言うと、歯肉退縮は根面被覆という治療で、露出した根を歯茎で覆い直せる可能性があります。

ただし、どんなケースでも完全に元どおりになるわけではありません。「どこまで戻せるか」は、歯茎の状態からある程度予測できます。ここでは治療の中身と、戻り具合を左右するポイントを、できるだけかみ砕いて説明します。見込みには個人差がある前提で読んでください。

3-1. 根面被覆とは?「結合組織移植」で歯茎を足す

根面被覆とは、露出した歯の根を歯茎で覆い直す外科的な治療のことです。当院でこの治療を行うときの中心になるのが、結合組織移植、いわゆるCTGという方法です。

やることはシンプルです。上あごの内側から、表面を傷つけないように歯茎の内側の組織を少しだけ採り、足りなくなった部分に移植して根を覆います。痩せて足りなくなった土地に、別の場所から良い土を運んで盛り土をするイメージに近いです。自分自身の組織を使うので、なじみやすいのが利点です。

移植した組織が新しい血流を得て定着すると、根の露出が解消され、歯茎の厚みとボリュームが戻ります。なお、結合組織移植は保険のきかない自費の治療です。定着の具合や仕上がりには個人差があります。

3-2. どこまで戻せる?「ミラーの分類」で見通しが立つ

「自分の歯茎はどこまで戻せるのか」。これが一番知りたいところだと思います。実は、その見通しは治療前の診断でかなり分かります。世界的に使われているミラーの分類という物差しがあるので、難しい用語は抜きにして考え方だけお伝えします。

カギは、「歯と歯のあいだの歯茎や骨が残っているかどうか」です。ここがしっかり残っているケースなら、露出した根をほぼ全部覆えることが多く、見た目の回復が大いに期待できます。

逆に、歯と歯のあいだの組織まで失われていたり、歯の位置が大きくずれていたりすると、覆えるのは一部にとどまります。つまり、歯と歯のあいだの組織が残っているうちに治療することが、きれいに戻すための分かれ目になります。どこまで覆えるかには個人差があるので、必ず事前の診断で見通しをお伝えしています。

目標は「本来の歯茎の境目」まで

治療のゴールをどこに置くかも大切です。基準になるのが、先ほど出てきたCEJ、つまり歯の頭と根の境目のラインです。

治療では、この本来の境目あたりまで歯茎を戻すことを一つの目標にします。診断のときに「本来ここまで歯茎があったはず」というラインを想定し、そこまで覆えそうかを見極めます。ただし、どこまで近づけられるかはケースごとに違います。無理に覆おうとすると、かえって仕上がりが不安定になることもあるため、診断にもとづいた現実的な目標設定が欠かせません。

3-3. 保険でできること・できないこと

費用の面で誤解されやすいのが、保険の扱いです。結合組織移植による根面被覆は、保険がきかず自費になります。「保険で歯茎を戻せませんか」と聞かれることがありますが、ふつうの保険診療で、下がった歯茎そのものを外科的に戻すことはできません。

保険でできるのは、CRと呼ばれる、歯科用の樹脂を使った処置です。根が露出して欠けたり色が気になったりする部分に樹脂を盛り、色や形をある程度整えます。手軽ではありますが、歯の長さ、つまり見た目の歯茎のラインそのものは変わりません。あくまで応急的な対応で、根本的な解決にはならない点に注意してください。

もう一つ、歯の根元がくさび状に欠けているかどうか、専門的にはNCCLがあるかどうかでも、向く治療が変わります。欠けがあるなら、樹脂で欠けを補ってから歯茎の治療を考えたり、見た目を重視してセラミックを組み合わせたりします。どの方法が合うかには個人差があります。

根面被覆は保険でできますか?

これも正直にお答えしています。今の保険制度では、結合組織移植による根面被覆は対象外で、自費の治療になります。保険でできるのは、さきほどの樹脂で色や欠けを整える程度で、歯茎のラインを根本から戻す治療ではありません。

「自費」と聞くと身構える方もいますが、根面被覆はただ見た目をきれいにするだけの治療ではありません。露出した根を覆うことで、将来の根面う蝕のリスクを下げ、これ以上の退縮を防ぎ、結果として歯の寿命を守ることにつながります。費用は症例によって変わるので、診断のうえでお見積りをお出しします。費用の感じ方には個人差があります。

4. 根面被覆で「できること」と「できないこと」

ここで一度、根面被覆で期待できることと、期待しすぎないほうがいいことを整理しておきます。治療を受けるかどうかを決めるうえで、とても大事なところです。

まず期待できるのは、見た目の改善です。長く見えていた歯が本来の長さに近づき、黒い三角のすき間や根元の黄ばみが目立たなくなります。口元の印象はずいぶん変わります。前歯であれば、「笑顔に自信が持てるようになった」と喜ばれる方が多いです。

そしてもう一つ、見た目と同じくらい大きいのが将来のリスクを減らせることです。根が露出したままだと、根面う蝕やさらなる退縮のリスクが高いままです。歯茎で根を覆い直すのは、こうしたリスクを抑えて歯を長持ちさせる「守りの治療」でもあります。健康な歯をできるだけ削らず・抜かずに守るという、当院のなるべく抜かない・残す治療の考え方とも重なります。

一方で、勘違いされやすいのが知覚過敏との関係です。くり返しになりますが、根面被覆をしても、しみる症状が必ず治るわけではありません。歯茎が戻っても神経の過敏さが残ることはありますし、術後に一時的に敏感になることもあります。「しみるのを治したい」が一番の目的なら、別の対処を中心に考えるべきです。良くなり方には個人差があります。根面被覆は「見た目を戻し、歯の将来を守る」治療。そう理解しておくのが正確です。

5. 治療後に再発させないために

せっかく歯茎を戻しても、下がった原因がそのままなら、また退縮は進みます。根面被覆は「やって終わり」ではありません。その後のケアと、原因のコントロールがそろって、はじめて長持ちします。

ここでは再発を防ぐための三つの視点、原因を断つこと・術後のケア・矯正との関係を順に説明します。効果がどれだけ続くかには個人差があり、日々のケアが結果を大きく左右します。

5-1. まず「下がった原因」を断つ

再発予防の出発点は、これまで挙げてきた原因を取り除くことです。歯周病ならそのコントロール、強すぎる歯磨きなら磨き方の改善、歯ぎしりなら就寝時のマウスピース。人によって対策はまったく違います。

たとえば、硬い歯ブラシで強く磨く習慣を続けたまま根面被覆だけやっても、また歯茎を傷つけてしまいます。原因に向き合わないまま手術をくり返すことほど、患者さんの負担が大きいものはありません。

そこで当院では、治療に入る前に「なぜ下がったのか」を丁寧に調べ、原因に応じた再発予防まで含めてご提案します。原因の数も種類も人それぞれなので、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの対策が必要です。

5-2. 術後のケアと磨き方の指導

根面被覆の成否は、術後の過ごし方で大きく変わります。移植した組織が定着するまで、その部分を刺激しないことがとにかく大事だからです。

当院では、治り具合に合わせて段階を踏んでケアしてもらっています。たとえば、手術直後からの約2週間は、その部分を歯ブラシで触らず、洗口液でのうがいだけにします。次の約2週間は、当院が指定するやわらかい歯ブラシで、ごく優しく清掃を再開します。そのあとさらに約2週間かけて、ふだんの歯磨きへ少しずつ戻していきます。

このとき覚えてほしいのが、歯ブラシをペンのように軽く持つ「ペングリップ」です。余計な力が入りません。こうした術後ケアは、歯科衛生士と連携しながら、その方の治り方を見て調整します。回復のスピードには個人差があるので、自己判断でふつうの歯磨きに戻さないことが肝心です。

院長・生野からのアドバイス

歯茎の手術と聞くと「術後がつらそう」と身構える方もいますが、私が一番お伝えしたいのは、正しいケアさえ守れば結果は安定しやすい、ということです。実際、術後にしっかり安静を保てた方ほど、移植した歯茎がきれいに定着しています。

特に大事なのが、最初の数週間で「触らない勇気」を持つこと。気になってつい磨いてしまう気持ちは分かりますが、そこをこらえてもらうのが、きれいな仕上がりへの近道です。当院では衛生士と二人三脚で、その時々に合った磨き方を細かくお伝えします。一人で抱え込まず、何でも相談してください。治り方は人それぞれですから、一緒に様子を見ていきましょう。

5-3. 矯正との関係は「入れる前」か「出した後」か

歯並びが原因に関わっている場合、矯正と根面被覆をどう組み合わせるかが、再発予防の大事なテーマになります。ポイントは、歯を動かす「向き」と「順番」です。

歯を顎の骨の内側、つまり歯列の中に入れていくケースでは、退縮は起きにくいので、必要なら矯正の前に歯茎を整えておく考え方があります。逆に、歯を骨の外側へ出していくケースでは、動かしたあとに退縮が起きやすいので、矯正のあとに根面被覆を行うのが理にかなっています。「矯正のあとに必ず根面被覆」と決まっているわけではなく、動かす向きで順番が変わるわけです。

ここで大切なのは、矯正を担当する歯科医自身が「根面被覆」という引き出しを持っているかどうかです。矯正医が外科的な歯茎の治療まで見通して計画を立てられれば、退縮のリスクを先回りして防げます。歯の動かし方には個人差があるので、矯正と歯周外科の両面から計画するのが理想です。

院長・生野からのアドバイス

矯正と歯茎の治療は、本来とても近い関係にあります。ところが現場では、矯正は矯正、歯茎の手術は別、と分かれてしまい、「矯正で歯を外に出したら歯茎が下がった」という相談を受けることが少なくありません。

僕は矯正と歯周外科の両方をやってきたので、計画の段階から「この歯はこの向きに動かすから退縮のリスクがある。だから順番はこうしよう」と、最初から最後まで一本の線で考えるようにしています。特に下の前歯は、構造上どうしても退縮を避けにくい場所です。だからこそ、動かす前に先のリスクまで見ておくことが大切だと思っています。お一人ずつ事情は違うので、まずはお口全体を診させてください。

6. 「手術がこわい」という方へ。当院の工夫

ここまで読んで、「必要なのは分かったけれど、やっぱり歯茎の手術はこわい」と感じる方もいると思います。当院では、その不安や痛みをできるだけやわらげ、安心して受けてもらえるよう、いくつかの工夫をしています。

歯肉退縮の治療は、細やかさが求められる外科処置です。だからこそ、心理的な負担を軽くする環境と、精密で確実な処置の両方が欠かせません。代表的な取り組みを紹介します。感じ方には個人差がありますが、少しでも安心の材料になればと思います。

6-1. 眠っている間に終わる「リラックス睡眠麻酔」

「手術中の音や感覚がこわい」という方には、リラックス睡眠麻酔を用意しています。点滴で鎮静薬を入れ、半分眠ったうたた寝のような状態で受けてもらう方法です。

強い緊張がある方や、器具が口に入るとオエッとなりやすい方でも、気づいたら終わっていたという感覚で受けられることが多いです。ぼんやりした心地よい状態のまま進むので、時間の経過も感じにくくなります。

もちろん体調をうかがい、安全管理のもとで行います。くわしくはリラックス睡眠麻酔のページをご覧ください。効き方や感じ方には個人差があるので、ご希望と体調をふまえて適用を判断します。

6-2. 精密さを支える「マイクロスコープ」

歯茎の治療、とくに根面被覆のような細かい処置では、どれだけ精密にできるかが仕上がりを左右します。当院では肉眼の20倍以上に見える歯科用顕微鏡、マイクロスコープを使い、細部まで確認しながら処置します。

移植する組織をどの厚みで、どの位置に、どう縫い合わせるか。この一つひとつの精度が、術後の定着や見た目の美しさに直結します。拡大して見られると、まわりをできるだけ傷つけず、最小限の範囲で処置を進めやすくなります。

肉眼では見えにくいところまで見ながら進められるので、繊細な前歯の審美的な治療でも、より自然な仕上がりを目指せます。仕上がりに個人差はありますが、この精密さへのこだわりが結果の安定につながると考えています。

6-3. CT診断・完全個室・30分のカウンセリング

診断と環境にも力を入れています。当院では歯科用CTで、歯茎の下の骨の状態を立体的に把握します。歯肉退縮の治療では、見えている歯茎だけでなく、その土台の骨がどれだけ残っているかを正確に知ることが、方針を決めるカギになるからです。

治療も相談も、すべて完全個室で行います。ほかの患者さんの視線を気にせず、デリケートな悩みも落ち着いて話せます。

さらに当院では、初診のときに30分ほどのカウンセリングの時間を取っています。歯茎が下がった原因、どこまで戻せそうか、費用や期間の見通しまで、納得いただけるまで説明します。不安なまま治療に進むことのないよう、疑問はこの場で解消してください。必要な処置や期間には個人差があるので、一人ひとりに合わせて提案します。

硬い歯ブラシで前歯の歯茎が下がった50代男性のケース

実際の流れがイメージできるよう、一つ症例を紹介します。個人が特定されないよう、内容は一般化しています。

来院されたのは、前歯の見た目を気にされていた50代の男性です。長年、硬めの歯ブラシで「しっかり磨かないと」と強い力で磨いてきた結果、上の前歯の歯茎が左右で下がり、歯が長く見える状態になっていました。さらに、以前に治した前歯の差し歯の縁が、歯茎が下がったことで黒っぽく見え、「笑ったときの口元が気になって、人前で笑いにくい」と悩んでおられました。

 

 

 

 

 

まず歯科用CTと口の中の精密な検査を行い、原因が「強すぎる磨く力」にあること、そして歯と歯のあいだの組織が比較的残っていることを確認しました。これで、根面被覆で見た目をしっかり戻せる見込みが立ちました。

 

治療では、結合組織移植による根面被覆で露出した根を覆い直し、あわせて黒く見えていた前歯の差し歯を、自然な色合いのジルコニアセラミックに作り替えました。歯茎のラインを整えてから被せ物をやり直すことで、歯茎と歯が調和した仕上がりを目指しました。期間はおよそ5ヶ月・通院12回ほど。期間や回数は症例によって変わります。

治療後、鏡で自分の口元をご覧になった患者さんが、思わず涙を浮かべて喜んでくださったのが、強く印象に残っています。同時に、再発を防ぐための磨き方の指導も行い、原因だった磨き方そのものを見直してもらいました。なお、この治療は自費で、仕上がりや経過には個人差があります。

 

 

 

 

 

>>この症例の詳しい治療内容・費用はこちら

院長・生野からのアドバイス

このケースのように、「歯茎が下がったこと」を長いあいだ一人で気にしてこられた方は、本当に多いと感じます。私がいつも伝えているのは、「こわいから」「歳のせいだから」と先延ばしにすると、退縮はさらに進み、治療の選択肢が狭くなってしまう、ということです。早く向き合うほど、きれいに戻せる可能性は高くなります。

手術がこわい方には、さきほどのリラックス睡眠麻酔という手もあります。「気づいたら終わっていた」という形なら、外科処置のハードルはぐっと下がります。まず大切なのは、原因を正しく知ること。なぜ下がったのか、どこまで戻せるのかは、お口を直接見ればお伝えできます。一人で悩まず、気軽に相談に来てください。

7. まとめ:歯肉退縮は「原因を見極めて」治す

歯茎が下がる歯肉退縮は、「歳のせいだから仕方ない」とあきらめる症状ではありません。この記事で見てきたとおり、まずは歯周病・磨く力・歯並びといった原因を見極めることが出発点になります。

そのうえで結合組織移植による根面被覆を行えば、露出した根を歯茎で覆い直し、見た目を戻せる可能性があります。どこまで戻せるかは、歯と歯のあいだの組織が残っているかどうかで変わり、早く治療するほど有利です。根面被覆は見た目の改善だけでなく、根面う蝕やこれ以上の退縮を防いで、歯の寿命を守る治療でもあります。一方で、知覚過敏が必ず良くなるわけではないこと、保険がきかず自費になることも、知っておいてほしい点です。効果や経過には個人差があります。

「自分の歯茎は戻せるのかな」と気になったら、それが相談のタイミングです。気になる症状があれば、早めの受診をおすすめします。

ご相談・治療内容のご確認・お見積りなど、まずはお気軽に当院にご相談ください。歯科用CTによる精密診断と、トリートメントコーディネーターによる丁寧なヒアリングで、患者様一人ひとりに最適な治療プランをご提案いたします。

▼WEB予約はこちら(24時間受付) https://icontact-4.dapo.jp/docoapo/webform.php?id=39519&portal

西宮北口歯医者スター歯科|阪急西宮北口駅 北改札から徒歩30秒

8. よくある質問

Q1. 下がった歯茎は、一度の治療で元に戻りますか?

症状の程度によりますね。歯と歯のあいだの組織が残っているケースなら、一度の根面被覆で根をほぼ覆えることも多いですよ。範囲が広かったり、何本にもまたがっていたりすると、何回かに分けることもあります。どこまで戻せそうかは診断でお伝えできるので、まずは見せてくださいね。仕上がりには個人差があります。

Q2. 手術はやっぱり痛いですか?

処置中は麻酔が効いているので、痛みはほとんど感じません。こわさが強い方には、半分眠ったような状態で受けられるリラックス睡眠麻酔もあります。術後は多少の腫れや違和感が出ることもありますが、痛み止めでコントロールできる範囲がほとんどです。感じ方には個人差がありますよ。

Q3. 治療しても、また下がってきませんか?

正直に言うと、原因をそのままにしていると再発のリスクはあります。だから僕は、「なぜ下がったか」を突き止めて、磨き方や歯ぎしりの対策までセットで考えるようにしているんです。術後のケアを続けてもらえれば、いい状態を長く保ちやすくなりますよ。

Q4. 何歳まで治療できますか?

年齢そのものの上限は、基本的にありません。大事なのは歯茎や骨、それに全身の健康状態です。状態がよければ、歳を重ねた方でも十分に治療できます。逆に若くても歯周病が進んでいれば、まずそちらが先になります。年齢だけであきらめないでくださいね。

Q5. まず何から始めればいいですか?

まずは原因を知るところからです。当院では初診で30分ほど時間を取って、CTで骨の状態まで見ながら、なぜ下がったのか、どんな治療が向いているのかを直接お話しします。いきなり手術ではなく、納得してもらってから進めるので、安心して相談に来てくださいね。


※本記事は一般的な歯科医療の情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。治療効果や経過には個人差があり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。自由診療となる治療は、症例によって費用・期間・必要な処置が異なります。結合組織移植による根面被覆などの外科処置では、術後の腫れ・出血・疼痛、移植部位や採取部位の一時的な違和感、まれに移植組織の生着不全や後戻りなどが生じる可能性があります。リスク・副作用の詳細、ならびに患者様お一人おひとりに合った治療計画については、当院でのカウンセリングにてご説明いたします。

執筆担当:西宮北口歯医者スター歯科 院長 生野智也

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